シニアからの学び

介護・主夫業・花作り, etc. シニアから学びの日々が再び

直前の記憶が無くなる”記憶障害” 慣れるまで時間がかかりました

認知症の代表的な中核症状の記憶障害。数分前に(直前に)見たこと、聞いたことを、また自分がした行動でも思い出せなくなってしまうものです。

 

認知症の本を読んでいると、「認知症の人は記憶障害があるので、同じ質問を何度もしますが、不安を感じさせないように、にこやかな表情で何度も答える」と書いてあります。

しかし、私は、何度もこれを実行しようとしましたが、なかなかできなかったですね。何度も同じ事を聞いてくると、ついついイライラして「それ、さっきも言ったよ!」と母に辛く当たっていました。その後は、何であんなこと言ったんだろうと反省ばかり。

そして、介護を続け、母が何度も聞いてくることに慣れるのに、本当に時間がかかりました。

 

なお、認知症の母の行動を見ていると、この直前の記憶が無くなると言う記憶障害が、何度も同じことを聞いたり・言ったりすることを含め、ふだんの生活に様々な不自由を与えていました。

①自分が便をしたのを忘れ「ここ何日間か便が出ていないのでお腹が苦しい」

②夜、寝る前にトイレに行ったことを忘れ、何度もトイレに行く

③物を片付けるとき、置いてある場所を忘れ、違った場所に置いてしまう

④物が使えなくなり新品に変えたとき、事前に説明したのに、それを忘れ、「何故、新しいのに変えた!」と言って怒る

⑤何日も同じ服を着てしまう(母の服装をみて時々洗濯します)

⑥ある料理を作るために準備した食材を、しばらくすると、何の料理のために準備したのかを忘れる。

⑦私がお風呂を入り、母に「お風呂入ったよ、次入ってね」と言ったのに、それを忘れTVを見ている

 

このように、認知症の記憶障害は、生活のあらゆる場面に影響をおよぼし、何度も同じ事を聞くこと以外に、介護する側(私)に大きな負担とイライラを与えます。

 

私は、認知症の母を介護する前は、TVなどで記憶障害の話を聞いても、「あー、直前の記憶が無くなるんだね」ぐらいにしか考えておらず、こんなに日常生活に影響を与えるとは、とても想像できませんでした。

 

 

なお、母の記憶障害による生活の不自由さに慣れてきたのは、母を24時間介護して、約1年が過ぎた頃でした。

 

同じ話を聞かれても何度も答え(さずがに、短時間に4回以上、同じ質問をされたら、紙に書いて渡しています)、便をしたのを忘れるのでカレンダーに(他の人から分からないような)印を付けたり、料理は母が野菜を切って私が料理をしたり、様々な工夫をして、なんとか、母の記憶障害の不自由さを解消しています。

 

直近の記憶が無くなる「記憶障害」は、生活の様々な不自由を与えますが、認知症介護では避けては通れないものです。

しかし、なんとか、この不自由さを解消する方法を考えないと、介護される側に加え、介護する方にも大きなストレスを与えます。

記憶障害には、生活上の様々な工夫が必要です(精神論だけではダメなような気がします)。

 

なお、記憶障害には意外な利点もあります。私が、母に少し言いすぎたかなというような時でも、それを忘れてくれます。

もし、介護する側が少し言い過ぎたかなと思っても、それを引きずらず、にこやかに行動していると、記憶障害のお陰で、母はなんとも無かったように感じているようです(少しは嫌な気分は残っていると思いますが)。