認知症の母を介護する前は、認知症の“記憶障害”は、財布が無くなった!と騒ぐことかと単純に考えていました。しかし、“記憶障害”は、生活のあらゆる場面で障害になり、生活が不自由になることが介護をして分かりました。
母は数分前のことを忘れるので、まず、会話が続きません。何度も同じことを繰り返し聞いてきます。
食事の後片付けで、皿を食器棚にしまう位置を忘れて、違う位置に皿をなおすこともあります。ある時は、包丁をどこかに置いて、あわてて探し回りました。
また、洗濯したものを正しい場所になおすことができず、服があちこちバラバラに置かれました。とにかく服を片づけることができないので、洋服、下着、パジャマの管理が大変になりました。
汚れた下着を廊下などに置くので、洗濯物がないか探すのが日課になりました。
“記憶する”ことは、生活をスムーズに送るうえでする、いかに大事か分かりました。そして、認知症になると、この記憶が無くなっていくので、生活がとても不自由になります。
なお、生活が不自由になり、介護する側は大変ですか、もっと大変なのは認知症本人だと思います。本人はとても不安になると思います。
私は、認知症の母が“記憶障害”で、思いがけない行動をするたびに、母を叱ったり怒ったりしましたが、これは、母の不安を増長させ、被害妄想や暴言も発生しました。
思いがけない行動をしても、「あー、これは記憶障害」なんだと考え、あわてず淡々と対応したほうがいいですね。
なお、認知症が初期段階では有効だった‘’メモ‘’が、記憶障害が進んだ中期段階になると不安を与えるようになりました。‘’メモ‘’がなぜあるのか分からなくなるようです。母は、メモをみて、「あれ!変なものがあるよ。気持ち悪い!」と言うようになりました。
また、初期段階では有効だったカレンダーの予定も、中期段階になると、何度も何度も私に確認するようになり、不安をかきたてるものになりました。
このように、記憶障害が初期段階から中期段階に悪化するにつれて、対応に変化があるので注意が必要です。
記憶障害は“物忘れがひどい状態”と安易に考えていましたが、生活全般に影響を与えました。
物事を記憶する事で、様々なことを連続的にスムーズに行い、生活が円滑にいくことを、認知症の母を介護することで、改めて実感しました。
なお、記憶障害は悪い面ばかりでなく”、良い面もあります。
それは、言い合ったことも、すぐに忘れるということです。認知症の母と言い合いしてケンカしても、母は、5分ぐらい過ぎたら忘れてました。だから、私も、過ぎたことに、引きずられずに忘れて対応することにしました。
「悪いことに引きずられずに、時には忘れる」の必要性を、認知症の母の“記憶障害”で改めて教えてもらいました。