シニアからの学び

介護・主夫業・花作り, etc. シニアから学びの日々が再び

認知症は“別世界に行くこと” 前向きに明るく考えたい

最近の某TV局の認知症番組、改めて、マスコミ関係者にとって、認知症は“異常な世界、辛い世界”で、家族は振り回され大変! といういつものパターンの番組でした。

私は認知症の母を自宅介護して、認知症のスゴさを実感しました。大声で母と何度も言い合ったり、時には、逃げたこともあります。だから、TV番組で言いたいことはよく分かります。

でも、認知症の介護を実際にやってみて思ったんです。TV番組などで知っていた認知症のイメージ、もっと違うイメージにもなるかもしれない。

つまり、“異常な世界、辛い世界”という暗いイメージではなくて、”別世界の人になって違う人生を歩む”という前向きで明るいイメージにもなる気がします。

これから先は、私の一個人の考えです。認知症のい介護は難しい世界、いろんな考えがあります。以下の私の言葉は、「あーそんな考え方もあるのね」と、気楽に読んで下さい。

認知症の母を介護した経験から、認知症を私たちの実生活の延長とみるのではなく、全くの別世界と考えた方が良い気がします。

つまり、実生活の中での価値観、考え方が通用しない世界、もっと割り切って言えば、”別な惑星の人の世界”。認知症になり、別な惑星の人になっても、幸せで楽しい時間を過すことは可能な気がします。

母の介護をして思ったのは、認知症の初期段階は、認知症の世界と実生活の世界を行ったり来たりします。この段階では、まだ、家族の名前も覚えていて、実際に家事なども少しはできます。

ただ、認知症が進んでくると、もう認知症という「別な惑星の人」になり、実生活の世界には戻ってきません。だから、家族の名前も忘れてしまう。これは仕方がないと考えています。

なお、認知症になると全ての人に現れる【中核症状】の主な内容は以下です。
①記憶障害・・・5分前のことを忘れてしまう
見当識障害・・・時間や場所、人がわからない
③実行機能障害・・・物事の手順がわからない
④失語、失算、失認、失行・・・言葉が出ない、それがなにかわからない

このような障害を持つ認知症の人の言動は、実生活の世界の価値観、考え方では、とうてい理解できません。だから、認知症の介護を続けるためには、時には、自分の性格や考えをチョット変えないと、やっていけない場合があります。これは自己否定になるので、とても辛かったですね。

認知症の母を介護して、何度も何度も思いました。なんで、理解できないの! どうしてそんな行動するの! でも、認知症の母にとって、そうするしかなかったんですね。

だから、認知症の世界は、別惑星の世界なんです。それを、実世界の延長でみるから、TV番組のように暗いイメージになると思います。たぶん、番組のプロデューサーも認知症介護の経験は無いと思います。

でも、認知症になったら別な世界に行くんだと考えると、少しスッキリ割り切れる気がします。私の母は、今はグループホームですが、職員の皆さんと、台所で一緒に食事の支度をしています。そして、毎月の行事(花見、運動会など)で楽しく過しています。私は、これでいいと考えています。

そして、母が私の名前を忘れても、「あー完全に別世界にいったんだなあ」と考えることにしています。別世界に行っても、母は母。母が完全に私を忘れても私は覚えているので、サポートは母が亡くなるまで継続します。

認知症は、初期(軽度)、中期(中度)、末期(重度)と確実に進んでいきます。初期(軽度)の頃は、認知症の世界と実生活の世界を行ったり来たり、中期(中度)以降は、認知症の世界つまり「別な惑星の人」になるみたいですね。

でも、認知症が進み、記憶障害が悪化しても、感情は残ると言われています。そのときの感情(嬉しかったこと、悲しかったこと)は残るそうです。だから、認知症が進んだら、覚えてもらおうと考えず、一緒に楽しむようにしたらいいですね。

本当に、認知症を、TV番組などで、もう少し前向きに明るく報道できないのかと考えてしまいます。あんなに暗く辛いイメージで放送されると、認知症の人も介護する人も、さらに辛いものになると思います。

もう一つ注意したいのが、特養とグループホームの違い。特養は認知症以外の人も入れますが、グループホーム認知症の人しか入れず、職員の方も充分認知症の知識があり、細かくサポートしてくれます。そして、グループホームは一つの棟で9人(個室)と決まっています(大体、グループホームは近くに2棟あります)。

最近見たTV番組は、特養に入所している認知症の方が対象でしたが、番組の公平性を考える以上、特養ばかりでなく、グループホームでの生活も合わせ、紹介したほうが良かったと思います。

個人的には、私の母が入所しているグループホームの職員の方は認知症介護の経験が豊富で、人数が9名なので細かいサポートもできているようです。嫁のお母さんも認知症グループホームに入所していますが、私の母も嫁のお母さんも、元気に暮らしています。

グループホームにいる母には、もう昔のしがらみは忘れ、私の名前も忘れ、施設の皆さんと、これからも自由に楽しく過して欲しいと思います。

追記:
最近、母の日にプレゼントとして、服とソープフラワーを、施設にいる母に持って行きました。ソープフラワーを見て嬉しそうで、本当に良かったと思っていました。
・・・・ところが、一週間ぐらいしてから、施設の職員の方が、グチャグチャになってゴミ箱に捨てられたソープフラワーを私の所に持ってきました。実生活の中で、こんなことはありえないし、もし、あったとしたら怒りますよね。

でも、認知症の母にとって、私からのプレゼントということは、すぐに忘れ、これ何だろうと触っていたらグチャグチャになったので、ゴミ箱に捨てたと思います。このように、記憶障害があるだけで、もう全く理解できない行動をとることになります。私は、別な世界にいるのだから、これは仕方がないと考えています。母の日に、プレゼントを見て喜んでくれた、それだけでいいですね。

 

(注)写真は母の日にグループホームの母に持っていった「ソープフラワー」。