シニアからの学び

介護・主夫業・花作り, etc. シニアから学びの日々が再び

人を判断するのは至難の技 「思い込み」を捨てよう

人への「思い込み」って恐いですね。私は、たった一つの言葉や態度で、あーこの人は、こういう人なんだと、すぐに思い込んでしまいます。最近、これで失敗したので、チョッピリ考えてみました。

たった一つの言葉や態度で、人を決めつけることなんて、本当はできませんよね。頭では分かっているのですが、すぐに人を、「あーこんな人なんだ」「この人は、なんとなく嫌い」「この人は助けてくれる、いい人だ」と決めつけるんですね。

実は、高校の同窓会を50年ぶりにやろうとして、私が幹事で進めていました。ここで、人の判断を誤りました。「思い込み」が原因でした。

同窓会の件で、ある人(Aさん)に電話したら「あー、それはいいね。いろんな人に声をかけるよ」と頼もしい声。もう、これで私の信用度は200%。

別な人(Bさん)に電話したら「最近、忙しくて、あまり協力できないかも」と頼りない声。もう、これを聞いて、ガッカリ、私の信用度は50%。

それで、しばらくしたら、このAさんとBさんは逆の対応だということが分かったんです。最初、信用度が200%のAさん、その後、応答なし。ところが、信用度が50%のBさん、その後、メールが来て「大変だと思うので、私に手伝うことがあったら、なんでも言って下さい。」という優しい内容。これで信頼度が50%から200%に。

でも、実際はAさんは、NPOの活動が忙しく、同窓会の対応ができなかったことが後で判明。もう、私の人の評価は、その時々の対応でコロコロ変わります。やはり、人を判断するのは至難の技ですね。

 

ヒルティと言う人が書いた「幸福論」の中に、次の言葉があります。
『われわれはどんな価を払っても、われわれ自身のために習慣的に、すべての人を愛するようにつとめなければならない、人々が愛に価するかどうかは問うことなしに。なぜなら、それを誤りなく判断することはきわめて困難だからである。
(中略)
憎まねばならぬのはどこまでも物であって、決して人間ではない。人の善悪を判断して公正を失わないということは、あまりにも困難である。不公平な判断は常に、判断を誤ったその人を最も強く苦しめるものである。』
ヒルティ「幸福論」 (岩波文庫) 草間 平作訳)

人を判断するのは困難なので、自分自身のために、アレコレ考えずに習慣的に人を愛するように努めなさいとあります。愛するというより、思い込み、先入観をなくして、人と接することが大事ということですね。「人の善悪を判断して公正を失わないということは、あまりにも困難」、まさにその通り! 人をこういう人なんだと決めつけると、結局、損するのは自分ですね。

また、ヒルティは「幸福論」の中で、どんなものにも、二つの面があると言っています。兄弟や友達から、不当なしうちを受けたとき、侮辱したという側面から考えるのでは無く、兄弟・友達であるという側面から考えるべきであると言っています。

例えば、私の妹はとても言い方がきつく、電話で話しをしたら、すぐに、それはダメ、もっと考えてと、強い口調で言います。それで、電話の後は、いつも気分はブルー。でも、後から考えると、妹は悪気は無く、かえって、参考になることもしばしば。妹だからこそ、兄に向って苦言を言っているんですね。

 

なお、聖書(マタイの福音書の中にも、人を裁いてはいけないという次の言葉があります。

『人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。 あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。 あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。』

すごい喩えです。丸太は目の中に入るはずはありません。その意味は、その人の目は塞がれていて何も見えていない、ということになりますね。「私には、あなたの目の中のおが屑がが見える」と言っているけれども、実はその人の目は丸太でふさがれていて、実は何も見えてはいないということになります。

人を見ているようで、実は見えていないという聖書のこの言葉、痛烈な言葉です。私には、思い当たるふしがいくつかあります。見えているようで、見えていない。特に人を判断するときは、見えていないことが多いように感じています。だから、人を評価する際は、注意が必要ですね。

なお、同窓会などで昔の仲間に会った際に、「あー、あいつ変わったなあ」ということがあります。これは悪い意味で使われることが多いですね。でも、人の性格はなかなか見えないもの、そして、人は変化するものですね。だから、人の変化を悪く言わず、「あー、こんな性格なんだな」と楽しんだらいいかもしれませんね。

ただ、もう一つ言えるのは、世の中には、危害を加える人がいるということです。例えば、電話での詐欺、本当に多くなりました。あの手この手で、人をダマし、高額なお金を盗もうとします。人を判断するのは至難の技であっても、ダマされないように注意することは大切ですね。

そして、自分に危害がない場合、そして、家族、知人である場合は、人を無闇に判断せず、思い込みや先入観を捨てることが大事ですね。それに、人は成長したり、変化します。その意味でも、ありのままに、その人を見ることが大事な気がします。

 

有名な心理学者の河合隼雄さんの「こころの処方箋」という本の中に、次の言葉があります。

『うっかり他人のことを真に理解しようとし出すと、自分の人生観が根っこのあたりでぐらついてくる。これはやはり「命がけ」と表現していいことではなかろうか。』
(「こころの処方箋」 河合隼雄著 新潮社)

河合隼雄さんは、人を理解するのは「命がけ」と言っていますが、最近、この言葉の意味がだんだん分かるようになってきました。やはり、「人を判断するのは至難の技」なんですね。